「涙」

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　もう　ずいぶんと　　　　　　　　　　　　　　　
　泣いた記憶がない。　　　　　　　　　　　　　

　叫び声なら　　　　　　　　　　　　　　　　　
　こんなに出るのに。　　　　　　　　　　　　　　
　少し気を許したら　　　　　　　　　　　　　　
　ため息だって　　　　　　　　　　　　　　　
　いくらでも　出るだろう。
　けれど、涙は　　　　　　　　　　　　　
　流れそうにない、
　自分自身のことにたいしては。

　他人のことで　泣くことは
　よくある。
　本とか、映画とか、音楽とか、試合とかでも。
　涙だって、最近特に、　
　簡単に　流れるようになってきてて。
　もしかしたら　ぼくは、
　けっこうな泣き虫かもしれない。

　なのに　自分のことで
　泣いた記憶というのは、
　小さいとき以来、本当にない。

　自分自身のこととなると、
　どこかにいつも必ず、
　冷静な部分が残ってて。
　他人のことのように、
　手放しで感情を開放することが
　できないみたいだ。
　こんなくらいじゃ、
　まだまだだろう、みたいな。

　いや、そうじゃないか。
　うれし涙を流すほど
　まだまだ努力が足りてなくって、
　くやし涙を流すほど
　ギリギリまでふんばってないから。
　だから、もっともっと自分を追いつめても
　大丈夫ってことなのか。
　涙が自然と溢れてくるまで、
　もっと自分を追い込んでいけ。

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